【品名】浣腸器2個
【種類】理容関連
【年代】1800年頃
【国名】不明
【材質】錫製
19世紀の浣腸器
新しい美容方法として、腸内洗浄が人気。だれでも食べることは大好きなのに、長いことお腹にためこむのはきらいみたいですね。言い伝えでは、浣腸を人間に教えたのはコウノトリといわれています。その由来は、鳥たちが海水をくちばしですくって、自分の肛門に注ぎ、食べ過ぎたものを排出していたことにあるといわれています。鳥でさえも腸内洗浄。でも便秘や下剤は、動物にとっては死に至るほどの重大な問題だったのですから、これは生物が生きていく上で身につけた賢い方法だったのですね。
コウノトリに教えてもらったのかどうかは別として、16世紀から19世紀のヨーロッパの人々は、からだに悪いものをためこまないことが最良の健康方法と信じていました。からだをからっぽにしておくこと。これがこの時代の理想的な健康方法であり美容だったのです。17世紀にいたっては、浣腸と下剤と瀉血(しゃけつ)はりっぱな医学療法。便秘はあらゆる諸悪の根元と信じられ、医師にすすめられるままに、王侯貴族は男女を問わずにせっせと下剤と浣腸を繰り返します。
太陽王として知られたルイ14世もまた浣腸に頼っていたひとり。彼は、晩年には2400本もの浣腸を施したそうです。写真の浣腸器は、19世紀のもの。ルイ14世が使っていた頃より、技術的にもデザイン的にも進歩していますが、やはり近代になってもまだ浣腸は日常的に行われていました。貴婦人たちは「内部のお掃除」と称してこの器具をご愛用。そういえばこの写真の浣腸器のデザインは、コウノトリのくちばしに似ていませんか?
浣腸については、しばしば風刺画や版画にも描かれています。たとえば17世紀の版画では、長いチューブのついたピストンのような浣腸器。ベッドに横にねそべって、自分で薬液を入れて行います。こうした長いチューブがついた器具が開発される以前は、ひとりではできなかったので、薬剤師が行っていました。これ以降、浣腸器が日常的に自宅で使用できるようになったため、貴族は装飾を施した浣腸器を造らせて使用するようになります。木製、銅製、写真のような錫(すず)を使ったもの、銀やベッコウ、金メッキ、螺鈿(らでん)まで。こういった器具にまで、意匠を凝らしたり、贅沢な素材を使うのですから人間って不思議ですね。18〜19世紀の風刺画でも、こういった器具を使って、貴族の女性が召使いに浣腸してもらっている絵が多く見られます。
いまも便秘に悩まされている女性は多いようですが、さて、あなたのお腹具合はいかがでしょう?
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